臆病なのにゾウを襲う?セグロジャッカルは慎重と無謀を使い分けてエサにありつく

2025/02/10

耳を立て、鋭い眼光でこちらを見つめるセグロジャッカル
(photo by:bradt97)



名称(学名)
セグロジャッカル(Lupulella mesomelas)
分類
食肉目 イヌ科 ルプレラ属
分布
アフリカ(南部、東部)
生息地
サバンナ、草原、山岳地帯、砂漠、海岸
体長
65~90㎝(頭~胴)、26~39㎝(尾)
体高
38~48㎝
体重
5~12㎏

欲望を抑えて的確に判断できる知恵者、天敵から襲われずに残飯を回収する方法

 食欲とは抗いがたいものだ。目の前にステーキを差し出されて、かぶりつかずにいられるだろうか。冷めてはもったいないと言わんばかりに、一心不乱にナイフを動かすのではないか。

 動物たちも”おあずけ”は苦手らしい。ライオンやブチハイエナの食事はなんとも豪快だ。我先に獲物へ群がると、顔が血で染まろうと気にも留めずに肉をほおばっていく。哀れな獲物は数分と立たずに骨と皮に化けるだろう。

 だが、ごちそうを前にしても自制心を働かせられる動物もいる。セグロジャッカルもそのひとつだ。彼らは残飯処理に長けており、道端に転がっている肉片をエサにして暮らしている。

 肉食動物の残飯では大して腹も満たせないが、時には怪我や病気で倒れた動物が見つかることもある。ほとんど手つかずで捨て置かれた獲物―――そう、ごちそうである。

道端で倒れたシマウマに群がるセグロジャッカル
ジャッカルはあらゆる動物をエサにする。最初から倒れている獲物であれば、サイズ差も関係ない。(pohoto by:Etosha)

 ジャッカルはとても臆病な性格をしている。小さな体ではライオンやハイエナに太刀打ちできないと知っているのだろう。目の前にごちそうが現れたとしても、決して警戒を解いたりはしない。夢中で食べている最中に襲われれば、自分がエサにされてしまうからだ。

 食べ方にもジャッカルの性格がよく表れている。一口食べては背後を振り返り、なにか近づいてこないかを確認しようとする。獲物に口をつけるときに耳を畳むのも、周囲のわずかな音を聞き逃さないための工夫だ。せっかく腹が満ちていい気分だというのに、血の匂いを嗅ぎつけた捕食者に襲われてはかなわない。

 ジャッカルは手早く食事を終えると、誰にも見つからないうちにその場を立ち去っていく。食欲という強い欲望に抗いながら、防衛意識を持ち続けるのだ。

 

 生き延びたければ臆病であること。ジャッカルはそのことを良く知っている。だが臆病なだけでは生き残れないことも、彼らは理解しているらしい。

 空腹に耐えかねたジャッカルは時に大胆な行動を取る。ブチハイエナの笑い声を聞いたり、ハゲタカが群がっている様子を見かけたりすると、その場所に向かうのだ。こうした兆候はそこに食べ物があることをほのめかしている。

 ただし食べ物があるということは、それを狩った肉食動物もそこにいることを意味する。あれだけ恐れていたライオンやハイエナに自分から近づいていくのは自殺行為ではないか。

 その心配は不要らしい。食欲に支配された動物の群れは、ジャッカルに興味を持たない。たとえばハイエナは肉を食べることに夢中で、しかもその肉を仲間に奪われないように競争もしている。そこにハゲタカまで加わるのだから、もはやどこに注意を向ければよいのかわからない。

 こうした混乱に乗じることで、ジャッカルはおこぼれにありつける。争いの最中、放り投げられた肉片を咥えるやいなや、一目散に逃げ出すのだ。これならば誰にも攻撃されずに成果が得られる。実にしたたかな作戦だ。

 もし攻撃の気配を感じても焦ってはいけない。食事を放棄してまでケンカしたがる動物は稀だ。ちょっと脅かしてやろう、くらいの軽い攻撃は飛んでくるだろうが、少し距離を取ってやれば避けられる。あとは警戒心が薄れたタイミングで懐に入りこみ、獲物を頂戴すればよい。

ライオンの糞でにおいを偽装する、ゾウやサイにさえ襲い掛かる…時には大胆不敵な戦略も

 空腹が限界を迎えると、ジャッカルの計画はさらに大胆なものとなる。あるジャッカルはライオンの群れがバッファローを狩る場面に遭遇した。するとそのジャッカルは茂みに身を潜め、注意深くライオンを観察し始めた。その日は獲物を奪おうとする不届き者もなく、ライオンたちは思う存分に獲物を堪能していた。

 あまりの快適ぶりに気を良くしたのだろうか。食事を済ませたライオンたちはやがて昼寝を始める。食べ残しを盗られないようにするためか、獲物を囲うように円陣を組んで寝息を立てていた。

 その一部始終をジャッカルは眺めていた。そして好機と見るとすぐに行動を開始する。抜き足、差し足。音を立てないよう慎重に近づいて、こっそりと食べ残しに齧りついた。ライオンたちが起きる気配はない。少し安心したジャッカルはさらに獲物をついばんでいく。

 だがその振動が伝わったのだろう。1頭のライオンが目を覚まし、続けて他のライオンも身を起こし始める。しかしジャッカルの行動も早かった。ライオンが戦闘態勢を取る暇も与えずに、全力で逃げ去ったのだ。そこに残ったのは、寝ぼけまなこで目減りした獲物を見つめるライオンだけだった。

 この成功の裏には偽装工作も絡んでいる。ジャッカルは得物に近づく前にライオンの糞を全身に浴びておき、自分のにおいを消していた。それでもライオンの群れに飛び込むなど正気の沙汰ではない。ジャッカルが計画をやり遂げたのは称賛に値する。しかも綿密に計画を立てて犯行に及んでいるのだから、明らかな確信犯だ。

 普段の臆病さはどこへやら。好機と見るや果敢に行動するのだから、その度胸には驚かされてしまう。


 無謀と思える行動は他にも見られる。とあるジャッカルは襲いかかるような勢いでゾウの足に迫っていった。かわいそうになるくらいのサイズ差だ。当然、ジャッカルがなにか得ることもなく、そこには「小さなイヌに襲われて逃げる大きなゾウ」というおかしな結果が残された。

 またあるジャッカルはサイにまとわりつき、執拗に攻撃を続けていた。どうやらそのサイは怪我をしていて、思うようにジャッカルを追い払えなかったらしい。とはいえ誤って踏まれようものならば命はない。巨体を倒せるとも思えず、ジャッカルの無謀とも思える攻撃には首をかしげさせられるのだった。

 ジャッカルが巨大な動物を打ち倒すことは不可能だ。それでも度々、無謀としか言いようがない狩りに挑戦する姿が目撃される。一口だけでも肉を得ようと考えたのだろうか。あまりにも無茶な行動だが、彼らには彼らの行動理念があるのだろう。

 まるで『死ぬこと以外かすり傷』とでも言わんばかりだ。生き残るためならばどんなリスクも負って見せる。そんな覚悟さえ感じられる。彼らは臆病と無謀を使い分けて、今日も糧を探しているに違いない。

昆虫やネズミで空腹をごまかして、失敗覚悟で鳥の群れに突進する機を逃さない姿勢

 ジャッカルは残飯しか食べないわけではない。むしろ動いている獲物の方が好みで、状況に合わせて様々な狩りを楽しんでいる。

 小さな獲物はオヤツにぴったりだ。シロアリや甲虫、バッタにクモ。サソリやトカゲも小腹を満たしてくれる。彼らはその大きな耳を地面に当てて、獲物が地中でうごめく音を聞いて回る。つまみ食いをしながら歩くのだ。

 時には昆虫ではなく、茂みに潜んでいるネズミやトビウサギを見つけることもある。その場合はピョンと空に向かってジャンプして、落下する勢いのままに獲物を踏みつけて捕えてしまう。ちょっとした狩りならばお手の物なのだ。

地面に顔を付けてエサを探すセグロジャッカル
聴覚や嗅覚を活かして地面に潜む昆虫や小動物を探る。(photo by:Nel_Botha)

 成功率はあまり高くないが鳥を捕まえることもある。カラカルであれば飛んでいる鳥も叩き落とせるのだろうが、あいにくジャッカルはそこまで高く跳ぶことができない。せいぜい飛び去ろうとする鳥に前足を触れさせる程度が限界だ。そもそもジャンプした瞬間には、すでに鳥が飛び去っていることも少なくない。

 ジャッカルもそれは承知の上だ。1度失敗したくらいで諦めたりはしない。逃げては戻ってきてを繰り返す鳥の群れに対して、何度も突進を重ねていく。そして反応が遅れた鳥を見つけると、その隙を逃さずに跳びかかって頭や前足をぶつける。

 こうした”ラッキーパンチ”が運よく決まれば、鳥は空から叩き落とされて地面に縫いつけられてしまう。そこを噛みついてやれば、今まで費やした労力も報われるというものだろう。

 鳥といえば卵も貴重な収入源になる。特にダチョウの卵を得られると、数日間は飢えを忘れられる。ただしダチョウは体が大きく、また攻撃的な性格をしているため、小柄なジャッカルでは手が出せない。孵化しなかった卵が放置でもされていなければ、その味を確かめることは難しい。

 残念ながらジャッカルにとって、鳥に起因する食物は”運任せ”でしか手に入らないらしい。だがそうした幸運を勝ち取ってきたからこそ、彼らは今日まで生き延びることができた。機会を逃すまいという姿勢は、時に大きな成果を生み出すのだ。

連携で狩猟成功率は3倍以上に、ガゼルとの持久戦を制し強奪者を撃退するつがいの絆

 熟練のジャッカルは自分より大きな獲物も狩ることができる。限界値はトムソンガゼル、最大30㎏にもなる中型動物だ。ジャッカルよりもはるかに重たい相手だが、能力をすべて駆使すればやれない相手ではない。

 第1ラウンドは我慢比べだ。スピード勝負ではガゼルに敵わないが、持久走に持ち込めば勝機はある。ジャッカルはしつこく追いかけて、獲物が疲れるのを待ち続ける。やがて逃げきれないと判断したガゼルは、その場で立ち止まってツノを振り回してくる。第2ラウンドの開始だ。

 ガゼルはツノで牽制しながら息を整えると、捕食者の隙をついてまた逃げようとする。もっともジャッカルにその手は通じない。ガゼルの周りをグルグル回り、背後から噛みつきを加えようとする。ツノを避けながら相手の体力も奪う、効率的な攻撃だ。これが長引くとガゼルも疲労を隠せなくなる。

 動きが鈍ったガゼルには死が待っている。ジャッカルは仕上げと言わんばかりに獲物の横腹を噛み裂いてしまう。そして攻撃を続けながら肉も食べ始める。もはやガゼルに助かる道はない。


 獲物を狩る実力はあるのだが、どうにもジャッカルの攻撃は決定打に欠けている。狩りは長時間に及ぶことも多く、怪我を負わせた獲物があたりに血のにおいを充満させてしまう。もし他の捕食者がそのにおいを嗅ぎつければ、獲物を奪おうと襲いかかってくるだろう。狩りに時間をかけるのはリスクしかない。

 そもそも中型の草食動物はどれも素早い。最初のスピード勝負で距離を広げられてしまえば、持久走を仕掛けるよりも前に見失ってしまう。1匹だけで狩りに臨むのはやはり難しい。

 となれば頼もしいパートナーが欲しいところだ。実際、2匹以上のジャッカルが協力して狩りに挑むと、狩猟率は3倍以上になるといわれている。

 ジャッカルの「群れ」は、1匹のオスと1匹のメスが出会うことから始まる。将来的に夫婦となる、1対の”つがい”が群れの最小単位となるわけだ。互いに苦しい独身生活を送ってきた身であればこそ、パートナーが欲しいという願いは重なる。つがいはすぐに打ち解けて、狩りも協力してこなすようになる。

草原を共に歩き回るジャッカル2匹
ジャッカルの群れは最大で10匹にもなる。その始まりは1対のつがいだ。(photo by:Tanzania)

 パートナーと共に挑めば、もはやガゼルに苦戦することはない。連携して獲物を追い込むと、攻撃も効率的にこなしていく。

 まずは片方のジャッカルが背中側から攻撃を加える。それを嫌ってガゼルが振り返れば、もう片方のジャッカルがまた背中に噛みつく。どちらを向いても攻撃される悪夢のような状況に陥って、ガゼルはすぐに力尽きてしまう。あとは他の捕食者が寄ってくる前に、つがい仲良く獲物を分け合えばよい。

 2匹で行動すれば、他の捕食者の強奪もある程度は防げる。ケンカも狩りも要領は同じだ。攻撃されないように相手の周りをグルグル回り、隙あらば相手の背後から噛みつけばよい。

 もし強奪者が片方のジャッカルを攻撃しようとしても、もう片方が背後から攻撃を加えてくるので、落ち着いて狙いを定められない。かといって背後を振り向けば、また片方のジャッカルが噛みついてくる。交互に攻撃すれば反撃を封じられると、ジャッカルたちは知っているのだ。

 やがてジャッカルとのやり取りが面倒になった強奪者は、獲物を諦めて去っていく。”勝利の余韻”というスパイスも加わり、つがいは喜びの味も知ることになる。

一生を共にする一夫一婦、20分に及ぶ交尾のヒミツはイヌ科ならではのパニック現象だった

 共に狩りをするのもよいが、時にはひとりで出かけることも悪くない。捕まえた獲物をパートナーにプレゼントすれば、それが親愛の印になる。あるいは互いに毛づくろいをして楽しむのもよい。自分では手が届かない部位も、パートナーがやさしく舐めて整えてくれる。

 だが親密な関係にあるつがいも、繁殖期を終えるまでは油断できない。パートナーを所望するのはその2匹だけではない。余所からやってきた独身のジャッカルが、2匹の間に割って入ろうとするかもしれない。

 実際にメスをめぐってオス同士が闘うこともある。普段は臆病なジャッカルも、この時ばかりは過剰なまでに相手を攻め立てる。余所者は血だらけになり、足を引きずりながら逃げ帰っていく。

ジャッカルは一夫一婦で知られる動物だ。つがいは生涯を共にする。(photo by:Montavigus)

 メスが発情期を迎えると、オスは交尾を誘うようになる。ただし若いつがいの場合は、初交尾でたびたび混乱が生じる。イヌ科動物のオスは独特な機能を備えており、ペニスの基部が膨張すると、メスの膣内から物理的に抜けなくなってしまう。

「からだが離れない!どうしよう!」。オスもメスも大混乱。オスがメスの背中へ乗っかるように始まった交尾も、互いに姿勢を安定させようとした結果、尻合わせの姿勢となっていく。やがて姿勢が安定すると、つがいはようやく落ち着きを取り戻し、オスも射精を終えて離れることができる。

 こうしたパニックもあって、ジャッカルの交尾は1回に20分以上かかることもあるのだという。ちなみにブチハイエナは長くとも12分、ライオンに至っては20秒(ただし数十回と繰り返す)しかかからない。

耳を180度回転させて天敵を察知、立ったままの授乳や吐き戻しの食事で献身的に育児

 波乱の交尾期から2か月も経つと、母親は出産を迎える。どうやら獲物に困らない時期を見計らっているらしく、出産の時期にはそれなりの共通点がみられる。たとえば夏に出産するとネズミが大繁殖するタイミングで子育てに励める。ジャッカルは冬に出産することもあり、この場合は寒さに倒れた有蹄類をエサにすることができる。

 母親は1度に最大6匹の子を産む。ただし大人まで生き残れるのはごくわずかだ。生存率は平均1匹ともいわれ、子育ての過酷さを物語っている。

 大人のジャッカルでも襲われてしまうのだから、子どものジャッカルが襲われないはずがない。襲いかかってくる動物は数知れず、「ネコ科」「イヌ科」「ハイエナ科」と科名で考えたほうが早いくらいだ。

 子どもを守るためにも、ジャッカルの夫婦は見張りを欠かさない。父親と母親でローテンションを組んで、交互にあたりを警戒する。だがそれでも不測の事態は避けられない。ある家族はブチハイエナの侵入を許してしまい、しかも折悪く子供の姿を見られてしまった。ブチハイエナは80㎏を超えることもある重量級の捕食者だ。ジャッカルでは束になっても敵わない。格好の的を見つけたハイエナはジャッカルの攻撃を受けながらも、子どもに噛みついて持ち去ってしまった。

 悲しいことに、ジャッカルの防衛は成功するとも限らないのだ。だから守りに徹するだけではなく、子供を隠すことも大切になる。たとえば彼らは定期的に巣穴を変えている。巣穴に滞在するとにおいがこもり、捕食者を呼び寄せてしまうからだ。子供が自力で歩けないうちは、首をやさしく噛んで1匹ずつ運んでいく。

 母乳を与えるときも警戒は怠らない。母親は立ったままの姿勢で母乳を与え、緊張した様子であたりを見回す。目線を高くして、天敵をいち早く発見しようというのだろう。たまに耳だけを背後に向けて、後ろから忍び寄るものがいないかも探っている。ジャッカルは耳を左右に180°回転させられるので、動けない状況でも敵を察知できる。

 子どもが固形物を食べられる時期になると、両親は前もって食べておいた獲物を吐き戻して与えるようになる。獲物を巣穴まで運び込んだり、子どもを獲物の場所に呼び寄せたりするのはあまりにも危険なので、苦肉の策として”吐き戻す”ように進化してきた。


 親の苦労などいざ知らず、子どもたちは生後3週間ほどで巣穴から出てくる。彼らは元気いっぱいだ。親に遊んでほしくてちょっかいをかけたり、兄弟同士でふざけあったりと大忙しの生活を送る。

 毛づくろいや遊びを通して協調性を学ぶだけでなく、狩りの真似ことに興じることもある。両親のように耳を地面に向けようとして、耳をうまく動かせずに首ごとかしげてしまう子。獲物を驚かせる動きを真似して地面を叩く―――まではよかったのだが、楽しくなってしまったのか、そのままピョンピョンとウサギのように跳ねる子。

 子どもたちの行動は、狩りと呼ぶにはあまりにも可愛らしい。こうした瑞々しい好奇心があってこそ、ジャッカルは賢さを得られるのだろう。

警戒音、遠吠え、甲高い声、しわがれた声…。ジャッカルは声を使い分けて仲間とコミュニケーションを図っている(photo by:Adam Tusk)

 元気に遊び回っている姿からは想像もつかないのだが、ジャッカルの子にも臆病な性格はきちんと受け継がれている。子どもたちはよく訓練されており、親が「警戒しろ」と声を上げるだけで、遊びを中断して巣穴へ隠れようとする。

 あるいは身の危険を感じると、子どもたちは緊迫した声を上げて親を呼ぼうとする。幼い時分からすでに、どの状況でどんな声を上げればよいのかを理解しているのだ。

子供の生存率を劇的に向上させる「ヘルパー」とは?両親の厳しさが新世代を旅立たせる

 いくら警戒心を抱いていても、ジャッカルが大人になるまで生き残るのは難しい。ただしヘルパーがいる場合はその限りではない。

 ヘルパーとは両親が留守の間、子守りを手助けしてくれるメンバーを指す。ヘルパーがいると両親はエサ探しに時間を割けるようになり、子どもを襲おうとする輩も数の力で撃退しやすくなる。

 統計上のデータもある。曰く、ヘルパーが1匹いるだけで、子どもの平均生存数は3匹になるのだという。ヘルパー2匹ともなれば、子供の平均生存数は4匹にまで増える。ちなみに元々の平均生存数はわずか1匹のみ。ヘルパー様々だ。

 このヘルパーの正体は子どもたちの兄弟、つまり両親の娘と息子だ。家族の絆が数字として可視化されているのは実におもしろい。その性質上、ジャッカルは年を重ねるほど繁殖力も高まっていく。群れの規模が許す限り、群れはどんどん大きくなっていくのだ。

 もちろん子どもには、群れから離れる選択肢も与えられている。むしろある時期を迎えると両親は子どもに厳しく当たり、独立を促そうとする。

 旅に出れば苦しい独身生活が待っているのは間違いない。だが生涯のパートナーに憧れるのであれば、いつかは巣を飛び出さなければならない。勇敢にも独立を決意した若者は、知恵をしぼり危険も顧みず、懸命に生き延びてパートナーを見つけるだろう。そして両親の温かさを思い出しながら、自らの子を育てていく。

 たとえ弱くとも賢くて勇敢な子が育つように、夫婦で試行錯誤するのだ。


参考動画